Amazon Kindle版 電子書籍
自分で出版体験記


                     天川 彩

「電子書籍を自分で出そう!」突如決意したのは、
日本にAmazonのkindleサービスが入ってきた2日後のことでした。

最初に申し上げておきますが、私は、かなりのアナログ人間なので、
その日までkindleという単語も全く知らない状態でのことです。

では、なぜ??

…というと、突如としてそういう流れがやってきたから、
としかいいようがありません。
兎にも角にも、私が、kindleで出版するに至った経緯と、
悪戦苦闘しながらも、無事に出版することが出来た体験記を綴ることにします。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<経緯>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私は、これまで数冊の書籍を出してきました。
「タイヨウのうた」(SDK/ソニーマガジンズ出版)や
「ひ、ふ、み、の空」(PHP研究所)という小説の執筆のほか、
童話詩というジャンルの書籍なども出版社から出させていただきましたが、
ひょんなことから、IT関連会社から2012年夏、
電子書籍執筆のお話しをいただいたのです。

いくつか提案した中で、私が十年近く、
コミュニケーションについての講座を開催してきたものをまとめて、
書籍として執筆するものが決まりました。

ところが、いざ仕事を始めてみると、
様々なところで感覚のズレが生じていることがわかりました。

超がつくほどのアナログ感覚の私と、全てがデジタル感覚の先方。
また、電子であっても書籍は書籍と考える私と、
電子書籍は書籍でなく、あくまでもアプリであると考える先方。
対象読者は、通常の書籍を読む層と変わりない層と考えている私と、
対象読者はITツール愛好家層であるという先方。

他にも様々なところで感覚のズレがあった為、私は先方の会社へ出向き、
担当者の方と顔を合わせてコミュニケーションを図ることにしました。

やはり、顔がわかる関係というのはいいものです。

それからは、原稿の進み具合も速くなり予想以上に早く脱稿しました。
ところが、その直後、担当者の方が、突如IT関連企業を退社してしまったのです。
再びどこまで経ってもスムーズに事が運ばず…。
結局、契約の捺印を押すことをお断りしたのは、2012年10月28日のことでした。

書き上げた原稿は、私が十年近く、コミュニケーション講座で、
受講された方々に直接伝えてきた内容を凝縮したものでした。

よほど何処かの出版社へ連絡をして、
一般の書籍に出来ないものか相談してみようかとも思いました。
しかし当初より電子書籍化を念頭において書いた原稿。
まずは電子書籍を扱っている出版社にかけあってみようと
「電子書籍 出版」と入力して検索してみました。
すると、なんとAmazonの「Kindle Direct Publishing」というサービスで、
自分で電子書籍を出版できるサービスが日本でも始まったというニュースが、
わずか2日前、2012年10月26日付けで出てきたのです。

はじめは、見慣れない単語や横文字ばかりで内容を把握するのに
少し時間を要しましたがよくよく落ち着いて読むと、
自分の原稿をダイレクトに電子書籍にして、Amazonと契約できるとあるのです。
しかも、その為に使うシステムも全て無料。

要は、データの入稿を自分で行うことが出来れば、
Amazon内のストアに書籍として並べて本を売ってくれるという、
まるで夢のようなサービスが開始になったということがわかりました。

「これだ!!!!!」
私の鼓動は高鳴りました。

ただ、喜んだのも束の間。よくよく考えれば、
IT用語もチンプンカンプンな私。
新たなシステムを使って自らが電子書籍の出版など、
絶対に無理なことだと直に諦めようとしました。

でも…
もしも自分でそれをやり遂げることが出来たなら…
この原稿を、ちゃんと生かすことが出来る。
コミュニケーションで悩む、見ず知らずの多くの人々を応援することが出来る。

そう思った私は、未知の世界にチャレンジしてみることにしたのです。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<実際にやってみました>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

まずは、Kindle Direct Publishingを検索してみました。
数年前から、ほとんどの書籍はAmazonで購入するようになっていたこともあり、
Amazonログインをしただけで、直ぐに書籍作成のページが出てきました。

まずは、印税の振込口座などを入力です。
まだ、何一つ始まっていないというのに、
印税が振り込まれる口座の登録が真っ先に出てきたことに、少し驚きました。
それから、諸々の質問に順番に答えていき、本のタイトルの入力です。

肝心の原稿入力は、Microsoft Word (doc)の状態であれば、
通常の原稿のままアップロードできるようでした。
しかし、あまりにも簡単すぎる作業だったので、
何かが間違っているのではないかと思い、確かめるのに1日かかりました。

また実際のアップされた状態を見る為には、
拡張プレビューツールKindle Previewerをダウンロードして見るのですが、
これにも慣れないため、少々手間取りました。
ようやくプレビューで読める状態になった時には、かなり嬉しかったです。

私の場合は、目次や原稿がズレていたので、
読みやすい状態に整えるのに、何度か入稿しなおす必要がありました。
こうして、納得行く状態までようやく整えることが出来たのです。
(実は最後のページの私の名前が、一文字ズレたまま、終了してしまいました。
でも、ご愛嬌ということで、今もそのままです)

パソコン用語や操作に慣れていたり、飲み込みの早い人なら、
1日で完成できるのでしょうが、私はここまでに1週間近く要しました。

また、Amazonの書籍コーナーにあがったり、ネットで検索したら出てくるので、
ブックカバーもそれなりに、ちゃんと整っているほうが絶対に格好が方がいいと思います。
私の場合は、ありがたいことにTENのスタッフにグラフィックデザイナーをしている
アキちゃんがいるので、彼女にデザインをお願いすることにしました。
原稿の入力が終わった頃、ちょうどブックカバーも完成。

最後に書籍の価格を決めて、終了です。
Amazon kindle版の場合、
日本円で100円以上の書籍であることが条件となっています。

電子書籍の主な価格を調べてみましたが、
考え方によって様々です。一概には平均が出せないのが現状のようですが、
紙の書籍より安く設定されてはいます。
私が書いたこの本は、一般書籍としては出版していないので、
価格を決めることが難しかったのですが、350円という価格にしました。

また、現在この書籍は、縦書きの日本語の書籍として形態を整えましたが、
いつか英語に翻訳した時には、
世界発売という項目も選ぶことが出来るようで、夢が広がります。

そんなこんなの準備を全て整えて、kindleの出版アップが無事、終了しました。
ちなみに、一応、最終的な出版権利はAmazonにあるので、
中身についてもある程度は審査があるようです。
倫理や最低限のクオリティを審査するのに24時間から48時間要します。
私の場合は、24時間後には、Amazon内で出版されたという連絡が入りました。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<ところが…>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私は、その日のうちに、アンドロイド系スマホで確かめてみようと、
まずkindleの無料アプリをダウンロードして、最初は書籍の見本版をダウンロード。
この段階で、序章まで読めました。その後、1クリックで書籍そのものも
ダウンロードして全てを読むことが出来たのです。

しかし、知らせた友人、知人たちから「iphoneやipadでは読めないヨ〜」
という声が次々と舞い込んできました。
調べてみると、確かに、対応機種という欄にiphoneやipadが入っていないのです。
また、この時点までは、PCでもソフトをダウンロードしたら読めるのかと思っていましたが、
日本のAmazonでは、今はまだ、スマホやkindle、ipadなどの
端末を使わなければ読めないということもわかりました。

ただ、スマホでもユーザーが圧倒的に多いiphoneや、
ipadで読めないのでは、ほとんど意味が無いのと同様です。

私は直ぐに、Amazonへ連絡。
翌日Amazonから「システムに問題が生じているので早急に解決できるよう、調整します」
という返答が来ました。しかし、その後もなかなか直らない状態が続き、
結局は2週間近く経ってから「解決しました」という連絡が来ました。

Kindleで電子書籍を出版しようと試みてから、
今、購読可能な端末全てに対応できるようになるまで、およそ一ヶ月。
こうして自分で納得しながら電子書籍を出版するということが出来たのです。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<電子書籍を出版してみて>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ただ…
書籍が、紙の印刷物から電子書籍に全て移るということなど、考えられませんし、
個人的には、印刷物の書籍のほうが、やはり好きです。

でも、好き嫌いとは別の次元で、電子書籍という分野は
これから益々広がってくるのは必至ですし、
また通常の書籍とは違った使い方が電子書籍にはあると思います。
絶版になって読めなくなってしまっていた書籍が復刻することも、
電子書籍なら可能ですよね。

今回の、私のkindle版電子書籍出版体験は、まだまだチャレンジ的なものですが、
近い将来、動画のYouTubeのように、誰もが手軽に、
電子書籍を出版することが出来る時代が到来すると思います。

電子書籍は、新たな可能性の一つであることは、
間違いないのではないかと感じています。

で、肝心の電子書籍のタイトルは『コミュニケーションの達人』です。

よろしければ、ぜひダウンロードして読んでいただければ幸いです。