「空海  〜その足跡と祈り 〜」に寄せて


なぜ、今、空海に関するイベントを開催しようと思ったのか。

それはひとえに、今こそ空海の思いや祈りに触れ、
今の日本の、そして日本人としての在り方を
皆で見つめ直してみたいと思ったからです。

空海は、生涯を通して鎮護国家を祈り続けていました。
この「鎮護国家」とは天皇の安泰を祈り
万民の幸福を祈ることを指します。

特に空海が大切にしていたことは、万人の幸福を祈ることでした。

唐に渡った空海は、仏教の「五明学」と呼ばれる学問を修めますが
その中の一つである工巧明(くぎょうみょう)に含まれる
土木工学も学んだことから、帰国後、人々の苦しみを救う為に
数多くの土木作業も手がけました。

中でも、香川の満濃池堤防再建は、有名な話です。
ちょうど今から1200年前の818年。
彼の地で大雨が降り池の堤防が決壊。大洪水となり
工事が難航し、集落の人々の生活が3年もの間
脅かされていました。そんな中、要請されたのが空海でした。

まずは祈祷を施し、その後は工事の陣頭指揮をとり、821年。
わずか3カ月で成功させたのです。

これは、空海を慕う大勢の人々の力が結集したこと、
土木工学の知識と経験、そして物事がスムーズに進むよう
神仏もサポートしてくれる祈りの力があったからでしょう。

ここ数年、連続して日本各地が大災害に見舞われています。

特に今年は連続して台風が上陸したり
大雨による甚大な被害が引き起こされていますが、
これは疑いようもなく異常気象がもたらすもので、
地球温暖化が原因であることは専門家の一致した見解です。

しかし9月にニューヨークで開催された
「国連気候行動サミット」において日本政府は気候変動に限らず
環境問題全般にも無関心なことが浮き彫りになりました。

また、戦争の痛み、原爆の恐ろしさを痛感しているはずなの
に、この国は再び愚かな戦争に加担しようとしていること、
原発事故の後も、未だ原発を稼働し続け、事故処理や多くの

被災者や犠牲者を後回しにし続けていることを、空海はどの
ような思いで見ているのでしょうか。

1200年以上経っても今尚、高野山の奥の院で生き続け、
民衆を加護し続けていると言われている空海。

弱り切った今の日本を、今一度奮い起こし元気にしてもらいたい
そんな思いからこのイベントを今回、企画いたしました。

弘法大師・空海は、今の日本をどのような思いで見つめているのか。

改めて一緒に感じてみませんか?


  天川 彩




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