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胸の前で両手を合わせて指を組む特異なポーズの特徴を端的に表すために「合掌土偶」と名付けられました。
天を仰ぎ、一心不乱に力の限り深く祈る様子が強く印象づけられます。その祈りは今日的な豊穣祈願や安産祈願と考えられています。一方、体育座りの姿勢は民俗例にみられる座産の出産姿勢と関連づける説もあります。
平成元年、青森県の太平洋側に面した八戸市郊外の是川地区にある風張(かざはり)1遺跡で、長芋作付けに伴う八戸市教育委員会の発掘調査によって発見されました。縄文時代後期後半と考えられる環状集落内の竪穴住居跡出入口から奥まった壁際の床で横倒しになって出土し、左脚だけが離れていました。落下を思わせるような状況から、壁に祭壇的な施設の棚が想定されています。土偶本体の手前には小さな焼け面が確認され祭祀行為との関連性もうかがわれ、屋内での土偶祭祀を考えるうえで貴重な発見となりました。
この土偶には女性器をはじめ、眉毛・鼻・鼻穴・目・口・乳房・指・肛門など人体的特徴のほかに、頭部にはひとつまげ型の髪形が表現されています。両肩にみられる半球状の突起は、環太平洋にみられる精霊が宿るとされる関節につけられた関節印しの表現とする説があります。体部文様には磨消縄文手法のひとつ、線書きした構図の内側に縄文を施文する充填縄文を採用しています。縄文部と無文部が効果的に配置され、装飾的意匠力の高さが感じられます。脚部の割れ口にはアスファルトを接着剤として繋ぎ合わせた補修の痕跡が明瞭にみられ、大切に扱われていたことがわかります。また、頭部や胴部にみられる赤色顔料の塗布痕から、その当時は全身が赤く塗られていたと考えられます。
このように、発掘調査による学術的価値とともに完存品、特異の合掌形、アスファルト補修、全身赤色塗彩など、その特徴が当時の風俗を考える上で極めて高い価値を有するものとして、平成21年7月10日付で縄文土偶として3例目の国宝に指定されました。
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